映画【ナイトクローラー】をひねくれ評価(評価点 8.2 / 10.0)◆ミステリー
【洋画 / ミステリー】ナイトクローラー / Nightcrawler
作品情報
- 公開 : 2015年
- 監督 : ダン・ギルロイ(1959年~)
- 主演 : ジェイク・ギレンホール
あらすじ
夜のロサンゼルス。盗品を売却し生計を立てるルー(ジェイク・ギレンホール)は、偶然遭遇した交通事故現場で、悲惨なスクープ映像をテレビ局に売ってギャラを稼ぐ、通称<ナイトクローラー>の存在を知る。
彼らに触発されたルーは、警察無線を傍受しながら事件や事故現場に駆け付け、スクープ映像をテレビ局に高額で売却していく。
スクープ映像を求めるあまりに次第に過激な行動へと発展していくルーは、ついに超えてはいけない一線を越えてしまう。
作品補足
主演のジェイク・ギレンホールは役作りのために体重を約10kg減量し、社会病質者を演じる。
第87回アカデミー賞ノミネート作品。
「ナイトクローラー」のひねくれ評論
一周回ってちゃんと気持ち悪い。
単純に主人公のやってる事と言ってる事だけ抜き取って見てしまうと、”ちょっとイカれてるけど仕事熱心なおっちゃん”にとどまり、作品全体に物足りなさを感じるかもしれません。
ただ主人公のキャラを現実に置き換えてみると、異常なレベルで利害関係や合理主義に徹底して焦点を置く、リアルに気持ち悪い人であることが分かります。
よくある映画作品のように、シンプルにクレイジーなキャラとしてとらえると、最後まで内容の薄い映画になりかねないので注意が必要です。
けっこう行き当たりばったり。それが余計気持ち悪い。
「知能が高い設定なんじゃないの?」と、一見突っ込みどころになりかねないその場その場の思い付き経営ですが、ここもしっかり気持ち悪さが出ています。
普通の人、というか普通の映画のサイコパスなら、もっと緻密で、もっと計算高く、高いプランニング能力が備わってたりしますが、異様な動機が衝動に変わり、躊躇の無い行動へと移っていく心の優先順位が、リアリティのある不気味さを演出しています。
見てる側任せの配慮不足がちらほら。
「今のどういうこと?」となるようなシーンは全くありません。
その代わりけっこう頭を使うというか、感受性を常時ONにしておかないと、気を抜いたらストーリーがシンプルに流れてしまい置き去りにされます。
見る側が作品任せで情報を処理してしまうと、物足りなさや突っ込みどころに目が行く結果を招きかねないので、その辺には不親切さを感じました。(個人的にはその不親切は好き)
基本的に一本調子。夜の雰囲気は◎。
緊張するシーンやかっこいいカーチェイスのシーンもありますが、展開に緩急はあまりありません。主人公のテンションも基本は一定。
活動シーンは夜がメインなので、作品のイメージも”夜”に仕上がっています。
全体的に暗ぁい感じで進行していく世界観が、キャラクターとよく馴染んでいました。
まとめ
この映画に高評価の人は普通の人よりちょっと変。
この作品を見た半数の方は物足りなさを感じると思います。
上述の通り設定に対する補足が無いし、こちらがしっかり感情移入をしておかないと、主人公の発言や行動に異常性を感じることはやや困難です。
もしもナチュラルに感情移入が出来て当然のように高評価を付けられる人は、おそらく普通の人より感受性が高くちょっと変な人です。
どちらにせよ、ダン・ギルロイ監督の他作品があればチェックしておきたいのは間違いありません。
ネタバレ評論
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これより先は、ネタバレを含んだ上でのひねくれ評論となります。
ネタバレNGの方は閲覧いただかないようお気を付けください。
↓↓ 以下ネタバレ評論 ↓↓
展開に意外性は無し。
ストーリー展開は「マジメかっ」と言いたくなるほどセオリーに忠実な仕上がり。
特に意外性のある裏切りなどもなく、基本的には予想の範囲内でおさまります。
まるで優等生の模範解答のような構成で、至極無難に、キレイにまとまっています。
ここが好みとしてどう見るかですが、個人的には小さくてもいいからおしゃれなオチがついててもよかったのになと感じます。
助手のリックをどう見るか。
結局シロ(無害)だったリック。彼の登場は深読みしすぎると不自然に感じてしまいます。
ルーがコスパを考えてバイトを雇うタイミングを「はやっ」と感じたのもあって、彼はシロなの?クロなの?と不要な先読みをしてしまいました。
ルーに近づいた経緯もバッサリ端折られているので、一瞬でもいいから求人を打つシーンなどが挟まっていても作風に影響は無いのになと感じます。
リックは重要キャラ。
結局ダメ男のまま死んじゃったリック。
ストーリー上なんのために登場させたのか不透明さを感じる方もいるかもしれません。表面上ではパパラッチビジネスを拡大させるオチの部分で「”研修生扱い”の新メンバー達をまた利用するのでは?」とウラ魂胆を連想させるシーンに繋がっているように見えますが、それだけだとサイコレベルが低く感じてしまう。
ここはやっぱり異常な衝動から行動へと移していく、不気味な思考を優先したいです。
作中、リックの報酬をめぐる交渉のシーンが複数ありますが、基本的にルーはリックの申し出を受け入れています。
ルー的に”想定内の申し出”とも取れますが、リックが死ぬことになる大仕事の直前ではわざわざ副社長に昇格もさせています。”危険な仕事をさせるため昇格をエサにやる気を出させて使い捨て”、これももちろん考えられますが、リックの死はルーが直接手を下したわけではないので、もし死んでほしくても確実性がない。
”生き残ったら生き残ったでまた利用すればいい”、これもありですが、終盤ではリックに調子に乗られてしまっており、部下として雇用を継続するには良好では無い関係に。リックの死に際にも「言う事を聞かない社員には~」と言葉を浴びせています。
つまり、”ちゃんと死んでくれなかったらどうしてたの?”という疑問が浮かんでくるわけです。
ここがこの作品の不気味に思うところで、頭はいいけど計画性の無さもある、という普通のヒト感が、「所詮は映画のハナシ」で片付けられない不穏な気持ちを駆り立てる禍々しいスパイスとなっています。
ニーナとの付き合い方も同じ。
ルーがスクープ映像を持ち込んだローカル局の女性ディレクター。
彼女との付き合い方も、ルーの優先順位を一貫させる演出になっています。
とくダネをつかんだルーがニーナにスクープを売る代わりに「これからはベッドでも逆らうな」といった脅迫じみた条件を突きつけますが、ここは単にルーの性癖を匂わせるシーンではありません。
と言うのも演出上ベッドシーンが無いどころか、朝起きて2人とも半裸でシーツにくるまってるようなシーンすら無かった点。
リアルな異常者を表現する上で、余計なイメージを持たせない演出のブレの無さを感じました。
不法侵入のシーン、死体をずらすシーンは注目したい。
警察の目を盗み、発砲事件現場の一般人宅に不法侵入してスクープ映像を撮影するシーン。
警察が来る前の事故現場で、アングル構成を気にして死体をイイ感じに移動させるシーン。
どちらもモラルを逸脱する、一歩誤った世界に足を踏み入れたシーンであるはずなのに、ここでは全くポジティブな演出が施されています。
新しいことを見つけた少年のようにピュアなルーの表情とあわせて、未来への希望を感じさせるようなBGMがひどくミスマッチで、見ている側はナチュラルに異常な世界へ引っ張り込まれます。
この辺は正直、あまりない演出、というかあまり味わったことのない気持ちにさせる瞬間だったので、素敵なシーンだなと感じました。
まとめ2
全体を通してやや説明不足の不親切を感じる点と、クライマックスが控えめであったところは、個人的にはもう少し盛り付けがなされていてもよかったと感じます。
ただ、あくまでも現実寄りの異常者、隣にいてもおかしくない程度のリアルな不安さはしっかり表現されていて、他のサイコな映画とは差別化が図れていました。
終始一定のリズムでしたが中だるみもなく、目立ったつっこみどころもなくて、納得のいく作品でした。
一口おまけ評価
運転上手すぎ。
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