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もはやひねくれた目線からしか作品を見れなくなった男が個人の見解で過去の作品を評価していくブログ。※基本的にネタバレを含みます 毎週金曜日21時頃更新です☆

「邦画/ラブ&ピース」をひねくれ評論(評価点 3.1 / 10.0)【ファンタジー・恋愛・特撮】

【邦画 / ファンタジー・恋愛・特撮】ラブ&ピース

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 作品情報

  • 公開 : 2015年
  • 監督 : 園 子温
  • キャスト : 長谷川 博己 麻生 久美子 西田 敏行 など

あらすじ

ロックミュージシャン崩れのさえないサラリーマン、鈴木良一長谷川 博己)は、同僚の寺島裕子(麻生 久美子)に静かに思いを馳せている。

現在は会社の同僚に廃棄物あつかいを受けるほどの仕事っぷりだが、陰では未だにロックスターへの大きな妄想を抱く。

ある日デパートで売られる1匹のカメに運命を感じ行動を共にするが、それを機に良一の周りで不思議な出来事が起こり始める。

再びロックスターへの道が開かれた良一。引っ込み思案だが音楽を愛する裕子。地下の不思議な世界でおもちゃを操る謎の老人。

それぞれの思いが音楽の力を借りて次々と奇跡を呼び起こしていく。

作品補足

監督は「地獄でなぜ悪い」や「新宿スワン」を手掛けた園 子温。

今作品は園 監督が無名時代に書いた脚本を、四半世紀の時を経てほぼそのまま映画化した作品。

 

 

 「ラブ&ピース」のひねくれ評論

 

 なんでもありの散らかし放題。

正直なところ設定を気にしてしまったらおしまいです。

ストーリー上で 「それは良くてそれはダメなんや」と幾度となくズッコケます。

付箋のように感じさせるシーンがあっても回収されなかったり、展開されていく各出来事に対して説明が皆無であったり、とにかく投げっぱなしのやりたい放題。ルール無視でしばきまわされました。

確かにファンタジーとかってなんでもありと言うか、どこか自由な表現が許されてるお絵描きのようなカテゴリかもしれませんが、やっぱりそれでも最低限見てる人に、ほんのちょっとでもいいから「ここはこうなんだよ」とガイドしてあげる優しさがほしかったです。

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存分な中だるみ。

ぶっとんだ展開を見せるかと思いきや意外や意外。セオリーに沿っていないだけで、各シーンに差し掛かかるタイミングでなんと先がうっすら読めてしまいます。

早い段階で何が言いたいのかが判明してしまうため、「わかったからもういいよ」という印象が作中全体に点在し、存分な中だるみを生み出してしまいます。

仮にわざとそうしたとしてもあまりに乱暴で、ば~んとメインの主張を見せられて、「後の補足は適当にそっちでよろしく」的なデリカシー不足が否めず、まるでケンカを売られてるような気持になってしまいました。

こちらはそんなつもり全然ないのに。

 

演技に穴は無し。

各登場人物の演技はさすがでした。

ただ、良一のダメ男リアクションの「ああぁぁぁぁぁっ」が、中盤に差し掛かったあたりで飽きが来てしまいましたが、謎のおじいさん役の西田 敏行の演技なんてまさに職人芸でした。

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楽曲が微妙 

良一がボーカルを務めるバンド、レボリューションQ。

ロックスター街道をひた走る売れっ子バンドになっていくわけですが、リリースされる楽曲が全て微妙な仕上がりです。

ウケ狙いならスベってるし、メッセージを込めてるなら響かない、ちょうどどちらでもない印象を受けます。

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まとめ

個人的に”賛否両論”というのは、好みの違いであるとか価値観の違いであって、もともとのクオリティやセンスは備わっていないといけないと思ってるんですね。

奇想天外、斬新、独創的、どれも本来大切にしないといけない大枠はあって、それをどう逸脱するかが面白かったりする。

今作品では監督の”遊び心”が”悪ふざけ”の領域であると感じます。

悪ふざけも大いに結構ですし、ある種ファンからすれば「そこが園 映画の醍醐味」ととる方も多いのでしょう。「分かるやつには分かる」的な感触は僕だって好きです。

けどそれをするなら劇場版の予告はあんなに綺麗に、無難に整っててほしくなかった。

それこそ「園 初心者はこの作品は見てくれるな」くらい強気でいてくれてたら納得はいくものの、見る人全てに感動を与えるようなテーマで見せるなんてずるいじゃないですか。

作品は映画に限らずお金があればどうにでも形になってしまうわけで、大勢の関係者さんはじめ、最終的にはファンの方々に支えられてお仕事が続けられる。

センス云々は置いといて「この監督、自分のことしか考えてないのでは?」と寂しさすら感じました。

ファンの方々にとっては「それもこれもひっくるめて園 作品」であるならば、「ほんとアンタこれからもファンの皆様に心から感謝しなさいよ」と母親みたいに口酸っぱく言いたい。

 

 

 

 

ネタバレ評論

 

↓↓ ここからネタバレを含みます ↓↓

 

これより先は、ネタバレを含んだ上でのひねくれ評論となります。

ネタバレNGの方は閲覧いただかないようお気を付けください。

 

 

 

 

↓↓ 以下ネタバレ評論 ↓↓

言いたいことは分かる。ただ・・・

カメにはピカドンと名付け、歌詞にも「ピカドンを忘れない」と反核ソングになっているあたり、このくだりで言いたいことはまぁわかります。

問題はこの演出をどのように受け取るかですが、正直なところ、雑い。いや、弱い。

不器用なのか、もしくは真正面から体当たりするのを避けているのか分かりませんが、少なくとも原発に対しての風刺は非常にふわっとしています。

たまたま流れるテレビのニュース映像で、若者たちのピカドンに対する認識の無さが伝わるシーンなどはよかったんですが、それ以降攻撃的な描写はありませんでした。

タイトル通り愛と平和を描くストーリーがテーマだったとして、なぜ原発に触れたのかがはっきり表現されていない

強い感情を映像や音楽で表現するんだから、もっと”怒り”とか”憎しみ”とかをわがままにぶちまけてもよかったのに。

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サンタは読めてしまった。けど素敵だった。

今作品で地下世界のパートは抜群に安心できました。

動物やおもちゃに囲まれた暖かい雰囲気に、西田 敏行の演技が絡まってほっこりしました。

正直サンタさんなんだろうな、と途中で気が付いてしまいますが、ゆっくり流れる雰囲気は単純に素敵でした。

地下世界のシーンと地上のシーンで監督が違うんじゃないのかと一瞬疑問がわくほどに、あの辺はもう俳優西田 敏行さんのチカラであると言えます。

演出的に若干の間延び感は否めませんが。

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良一はカメの力で結局成功者。

良一は結局努力無しであらゆるものを手に入れています。日本スタジアムから逃走して元の家に戻る途中泣いていましたが、決して哀れな末路ではありません。

音楽活動は継続できないかもしれませんが、カメの力で莫大な資産を手に入れて、自ら告白することも無く裕子までも戻ってきた。

ここでのび太ならしっぺ返しが待っていますが、資産と裕子をそのまま手に入れた状態で物語は終わります。

今作品の謎の一つなんですが、この展開ではいったい何を伝えたかったのでしょうか。いくつかの仮説を立ててみます。

 

① 1匹のカメを大切にした男への恩返しムービー。

良一に大切にしてもらった事へのカメからの恩返し。トイレに流されたのにカメは恩を感じるのでしょうか。

 ② 世の中平等じゃない。努力なんてなくても成功できるよムービー。

個人的にこれはしっくりきています。この仮説にあえて上げ足取りを試みても適格な指摘事項が思いつきません。

 ③ 世の中お金じゃない。ゆえに成功者の設定ではない。

良一の末路が僕のような貧乏人の感覚ではなく「お金があっても所詮自分は陳腐な人間だ」のような贅沢設定だとします。それだったらまず何の努力もしてないのに感慨深げに自分に浸るのはクズすぎるし、何より裕子が戻ってきたし。

 

どの仮説もぱっとしませんが、やはり良一はとてつもなくラッキーな男です。

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まとめ2

裏設定。人柄。知ったこっちゃない。これは「映画」である。

僕の映画作品の見方として、裏設定や、特に監督の前情報などは極力頭に入れずに鑑賞します。予告などで目に入ってしまったり、鑑賞途中で「これはだれだれ監督の作品かな」と気が付くことはもちろんありますが、そうなるまでは頭空っぽで作品に集中するよう心掛けています。

今作品で園 監督は特撮へのこだわりや都庁を破壊した経緯、また、震災や原発に対しての映画業界のあり方などを作品の外側で述べたりしています。

裏エピソードが悪いわけではなく、個人的にはそうした外側の情報を発信すればするほどに「もしかして作品に自信がないの?」と連想してしまいます。

真意は置いといて、ようするに監督個人に対する情報なんて本来作品と関係が無いし、作品を楽しむ上でかえって邪魔であるとすら思っています。

確かにいろんな情報を集めた上で改めて今作品を見返してみると、一味違う角度から見えてくる部分はあるかもしれません。

ですが基本は「作品が面白かったから裏設定や監督の事が知りたくなる」という順序が前提でなければいけません。

約120分間の上映時間があるなら、そこに全てを置いといてくれないと。

正直なところ、園映画がどうの、園ワールドがどうのと、作品だけの評価ではなく、園監督込みの映画批評になっている段階で「なんかズレてない?」と作品以外のベクトルを感じてしまいます。

なので今回、本当に純粋に、映画作品のみの批評と感想を綴りました。

いつか園監督と知らずに彼の映画を鑑賞する時がなんとなく楽しみです。

 

 

一口おまけ評価

イイものはイイ。

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