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もはやひねくれた目線からしか作品を見れなくなった男が個人の見解で過去の作品を評価していくブログ。※基本的にネタバレを含みます

映画【メッセージ】をひねくれ評価(評価点 7.1 / 10.0)◆SF

【洋画 / SF】 メッセージ / Arrival

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 作品情報

 

あらすじ

 

大学教授として教鞭をとるルイーズは、生徒から突然ニュースを見るように促される。
テレビでは世界12の各地に謎の宇宙船と見られる物体が突如あらわれ、政府機関が慌ただしく動いている様が報じられていた。

アメリカ軍のウィーバー大佐は言語学者として才能を発揮するルイーズに対し、宇宙船内に確認された生物とのコミュニケーションを取る任務を課す。

一人娘を無くしたトラウマでフラッシュバックに悩まされるルイーズだったが、彼らとの遭遇により人生に大きな変化が訪れる。 

作品補足

監督は「プリズナーズ」「ボーダーライン」等の作品を手掛けたドゥニ・ヴィルヌーブ。
アメリカの小説家、テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」を基に、エリック・ハイセラーが脚本を担当。
脚本家エリック・ハイセラーは、2016年に公開された日本のアニメ映画「君の名は。」の実写版の脚本家となる事が発表されている。

 

 

↓↓ ここからネタバレを含みます ↓↓

 

 

これより先は、ネタバレを含んだ上でのひねくれ評論となります。

ネタバレNGの方は閲覧いただかないようお気を付けください。

 

 

「メッセージ」のひねくれ評論

 

「言葉」の概念をデリケートに扱った作品。

2体の地球外生命体「ヘプタポッド」とコミュニケーションを取るために、言語学者のルイーズ、物理学者のイアンらが軍の技術を駆使しながら通訳ミッションをこなしていくわけですが、その過程には「言葉」に対する敬意というか、丁重な扱いを感じました。

人類はヘプタポッドに対し「あなたたちは地球に何をしに来たの?」というたった一つの質問をするために、何週間という期間にわたって検証と研究が繰り返されます。

そして彼らから「武器」というキーワードが出た途端に各国がざわつき、世界の連携に歪みが生じます。
聞き取った言葉の中には「武器」という単語とあわせて、「提供する」「使う」という動詞が含まれますが、主語や述語が確認できないため本当の目的がはっきりしない。
なのに聞き取る側(国)が異なれば敵だ(使う=使われる)、味方だ(提供する=提供してくれる)と解釈も異なり、結果結論も異なる。

これって、例えば学校、職場、家族、友達など、いろんなシチュエーションで見られるミスコミュニケーションの典型例ですよね。

相手に何かを伝える時は、その議題についての情報量、送り手の説明力、受け手の理解力、これらのバランスが整っているかもしくは双方が補い合っている状態でないと、「意思疎通」の精度を上げる事は困難です。

今作品ではこの「意思疎通」というテーマに対し、

・相手との距離を縮めるには段階を経る必要がある
・情報量が不十分な段階では結論を急いではいけない
・意思疎通のレベルアップが見られない間は無理に次のフェーズに移行しない

という、非常に合理的でレベルの高いコミュニケーションの極意が盛り込まれていました。
まぁ原作のタイトルが「あなたの人生の物語」で、原題が「Arrival(到達・出生 とか?)」なんで、意思疎通がメインのコンセプトだったかは分かりませんが、邦題では「メッセージ」となっています。
昨今では洋画に対する邦題のネーミングレベルがひどすぎる中で、個人的には今回の邦題は「お、なかなかやるやん♪」とちょっと見直しました。

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全体の完成度はギリギリ問題なしか。

ツッコミどころはもちろんありますがどれもギリギリ大目に見れるもので、作品の展開や雰囲気を壊してしまうような絶望的な穴は無かったように思います。

まぁその中でも個人的に「おや?」となったシーンがいくつかあるので、少し書いていきます。

大題:やっぱり政府はバカだった 

これはホントどの作品でもひとつのお約束になりつつありますよね。
なぜ警察や政府機関は多くの作品でバカばっかりなんでしょうか。
なんか最近では若干免疫ができてきたせいか、自分もそっちよりの目線になっているのではという一抹の不安を感じます。多分大丈夫だと思うけど。

ウィーバー大佐はバカだった

まず一つ目ですが、ウィーバー大佐がレコーダーを持ってルイーズのところに押しかけたシーンで、いきなり「ゴオ・コ・・コォォ」みたいなエイリアンの音声を聞かせて通訳を要求しました。
ルイーズは困惑して、もちろん「分からない」と回答するわけですが、「あっそ、じゃぁね~」的なリアクションでルイーズのもとを去ろうとします。

いくら有能な言語学者でも、エイリアンの声をいきなり持ってこられて通訳してと言われてできるわけがありません。
何より、いくらルイーズが知り合いだからって、エイリアンの存在が明らかになるような超機密事項を安易にいち教授に公開し、口止めもせずに去ろうとするのは不自然、というかバカなんじゃないかと思ってしまいます。

不自然さを無くすためにはやっぱり補足が必要で、例えばルイーズが過去に政府機関に所属してて機密事項の扱いは心得てるとか、ウィーバー大佐とちょっとだけ恋仲関係にあって信頼関係だけは絶対に大丈夫とか、なんでも良いんですよね。

話の序盤ということもあったので「この作品もしかしてヤバイ・・・?」と不安を煽られるシーンでもありました。

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②協力者たちへの説明不足

ルイーズ、イアンらが初めて謎の飛行物体の中に入った際に、彼らはヘプタポッドを目撃することになります。
恐怖に身をすくめるルイーズに対し、対策本部側は「さぁルイーズ、始めてくれ」といきなり仕事開始を指示。

確かにエイリアンと会う前の心の準備なんていつまでたっても出来ないし、ある程度ぶっつけ本番のノリが必要なのは分かりますが、政府機関としてお金を使って博士たちを呼び集めてる限り、少しでも早く成果を上げたいという気持ちはあるはず。

それなのに現場では無重力になる等の事前伝達も無く、姿形を含めエイリアンとのコンタクトで今までわかっている検証結果についてすり合わせが行われたシーンもない。

友達へのサプライズ企画じゃないんだから「見てのお楽しみ」みたいなことやってる場合じゃないのになと。
エイリアンとコミュニケーション取る前に、チーム内でのコミュニケーションを強化した方が良かったのではないでしょうか。

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③シャン上将のちょっぴりピュアな政治判断 

ルイーズが一連の騒動から1年後かなんかのパーティ―会場にタイムリープ中、シャン上将から携帯番号を教えてもらい、中国の宇宙船への攻撃を瀬戸際のタイミングで「シャンの亡き妻の最後の言葉」により説得し食い止めた、というシーンが展開されました。

このシーンに対するフォローがあまりにも欠落していて、このままだと中国政府に対するシャン上将の威厳が一瞬で消滅してしまいそうな気がします。
世界に発表した政府の意向を撤回するうえで、シャンはそれなりの理由を核関連機関に要求されたはずですが、どうやって切り抜けたのでしょう。
まさかバカ正直に「なんか電話してきた知らん女がな、死んだ嫁とおんなじこと言いよってん。だからな、攻撃やめとこ思うねん。」とは言えませんよね。

というか、作品ではルイーズとシャンの電話の中国語のやり取りは字幕化されておらず、結局どんな言葉をもって説得できたのか僕には分かりませんでした。
この作品に対して、「コミュニケーション」というテーマを大きく感じる僕としては、この「説得」の展開は一つの見せ場だったのではと思います。

「説得」の流れががっつり省略されたこのシーンですが、せめて「どうやって説得したんだろう」という疑問に対するアンサーはどうにか用意してほしかったですね。

まぁ無理に稚拙なアンサーを用意することで逆に「なんじゃそら」というツッコミどころが余計に増えてしまう可能性はいなめませんが。
何にせよシャンは奥さん思いのピュアなバカ将軍という事がわかりました。

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未来が分かるという残酷さ。

これは間違いないく今作品のメインテーマです。

世界観はSFですが、カテゴリはおもいっきりヒューマンドラマです。
全体のストーリーとしてはエイリアンが現れた段階ではルイーズには子供がおらず、時折訪れるフラッシュバックは未来のもので、その未来ではイアンとは離婚、一人娘のハンナは病死、という流れとなりますが、イアンと離婚した詳細な理由が分かるシーンは用意されていませんでした。

残酷な未来を知るルイーズが全てをイアンに打ち明け、それが原因でイアンとの精神的なバランス関係が保てなくなった、という仮説もたちますがやはり定かではありません。

物語のラストでは、そんな未来を知りつつもイアンと生きる事を決意したルイーズの判断がオチとして使われています。
その後の概ねの見解としては

・未来はどう行動しても大筋は変えられない、でも受け入れる説
・いやいやそんなことない、未来は自分たちで変えられる説

とかがあげられそうですね。
前者は「覚悟」、後者は「希望」というイメージがありますが、どちらも共通して言えるのは、これからの人生に対して愛情を注いでいくんだという絶対の「決意」が表れています。

でも、個人的な見解としては

・人間は未来に縛られるべきではない、なぜなら事前に知った未来よりも悲惨な人生になるかもしれないし、幸せになるかもしれないから説

を推したいですね。
何が言いたいかというと、未来を「変える」とか「変えられない」とかいう次元のものではなくて、「今を生きる事を優先する」から事前に見た未来は「一旦あてにしない、縛られない」、その結果結末がどうなるかなんて分からない、というか「計算にそもそも入れない」、といういわば根性論、精神論です。

「未来を見たからこう動く」というのは、自分の判断が絶えず後手にまわり、自分をブラッシュアップするための努力を怠る思考プロセスになっちゃいます。

まぁ現実には未来なんて見えるワケ無いんですが、個人的にはその辺のすごく抽象的なエッセンスが作品と自分の心をマッチさせてくれました。

絶対たまたまですが。

 

まとめ

ツッコミどころがあったのに作品の軸はぶれてなかった

まず述べたいのが、この作品の中でいくつかあるツッコミどころが、作品に対し悪影響を与えていなかったという点。
なぜ影響が無かったのかと言うと、そもそも大枠のストーリーとあまり関係が無いところでのツッコミどころだった、というのが大きな理由です。

もちろん話の流れの中でいちいち「?」となるにはなるんですが、この作品の絶対に言いたいであろうテーマがしっかりと確立されているので、全体を通して観るとさほど気にならない。(当然減点の対象にはなりますが)

これが例えばエイリアンが結局地球の言葉を話し始めちゃった、とか、政府の総攻撃により地球人vs宇宙人みたいになっちゃった、とか、そんな展開になったならもう目も当てられない作品になっていましたが、今作品ではメインの魂の部分は傷一つついていなかったと思います。

あと、無理にタイムリープものになっていなかったのも良かった。
タイムリープ系って、手を出しやすいジャンルのせいなのか駄作が95%くらいなんですが、そこにあまり近寄らない、必要最低限の良いところだけ拝借する、という距離感がレベル高かったです。

まぁ、切り取るところを変えればツッコミどころだらけのとんでも作品になりかねませんが、そこは意地悪せずに郷に入っては郷に従ってあげる方が楽しみ方としては適正じゃないかなと。

 

 

一口おまけ評価

こっちでも良いと思った。

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