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ひねくれ映画評論 HINEMA.com - 勝手に作品ランキング -

もはやひねくれた目線からしか作品を見れなくなった男が個人の見解で過去の作品を評価していくブログ。※基本的にネタバレを含みます 毎週金曜日21時頃更新です☆

「邦画/予告犯」をひねくれ評論(評価点 6.3 / 10.0)【サスペンス】

【邦画 / サスペンス】予告犯

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 作品情報

    • 公開 : 2015年
    • 監督 : 中村 義洋(1970年~)
    • キャスト : 生田 斗真 戸田 恵梨香 など

あらすじ

ネット上に突如現れた通称”シンブンシ”。

彼は法では裁けない社会的悪事を働いた者や、SNSで炎上騒ぎを起こした者などへ、制裁を加えることを次々に動画で予告しては実行に移していく。

ネット犯罪の対策部署であるサイバー犯罪対策課は、実際に暴力的制裁を繰り返す”シンブンシ”に対し捜査を開始。若くして警部補に上り詰めたエリートの吉野 絵里香(戸田 恵梨香)を筆頭に、”シンブンシ”との頭脳戦が展開される。

捜査が進展するごとに徐々に明かされる”シンブンシ”の本当の目的とは?

 

作品補足

原作は2011年から2013年までヤングジャンプコミックスで連載された筒井哲也による漫画「予告犯」。単行本は全3巻。

今作品の監督は、「白雪姫殺人事件」や「チーム・バチスタの栄光」など、数々の名作を手掛けた中村 義洋。

 

 

「予告犯」のひねくれ評論

終わり良ければ全て良し。

突っ込みどころの多かった今作品。

序盤から中盤にかけてダラダラとストーリーが展開されます。各登場人物のキャラ設定も薄め。現代のネット社会を表現した演出にも際立った斬新さは見当たらず、邦画・洋画通してオーソドックスな技法が採用されています。

ただ、多少強引でしたが中盤のグダグダを「よくぞ巻き返してくれた」と思えるほどに、終盤の展開にはなんとか胸を撫でおろすまとまり方となっていました。

”シンブンシ”の真の目的が大きな注目ポイントとなっており、それが明かされていく経緯は心を動かされるようなシーンに仕上がっています。

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戸田 恵梨香の演技がキツイ。

キャストの中でひと際目立っていたのが”シンブンシ”と頭脳戦を繰り広げる、サイバー犯罪対策課のエリート警部補、吉野 絵里香を演じる戸田 恵梨香。

吉野警部補は”シンブンシ”の一連の騒動に対して異常なまでの執着心を抱いており、”美人なのに傍若無人”な設定がなされているはずなのですが、エリート感、傍若無人感、執着心、聡明さ、人望の厚いキャラ、おまけに美人キャラ、全てにおいて演技力の希薄さが炸裂しています。

本来のインテリジェンスな作風が彼女の立ち回りのおかげで、単なるワガママねぇちゃんが町中を走り回るドタバタ劇を、地で演じ切ってしまう世界観となっていました。

演技の幅に制約のある女優さんでもあるので、問題はキャスティングなのでしょうか。

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部下たちもキツイ。

吉野警部補がキツイ背景には部下たちのキツさも加わっています。

特に演技に問題があるわけではないのですが、チームの班長である吉野の無茶な行動(の設定)に対して、部下たちのいわゆる”ツッコミ”が劇的に弱くて、吉野が一発屋ピン芸人のように仕立てあげられています。

チーム吉野が”シンブンシ”の一連騒動で急きょ結成されたにわか集団なら仕方ないですが、サイバー犯罪対策課は長年の歴史を刻んでいるはずです。班長である吉野は日々部下たちを振り回すような豪快なキャラ(の設定)なのに、部下たちは愚痴もこぼさず、かといって吉野の行動を抑制するようなツッコミ発言も無く、金魚のアレみたいにただただ大人しく後ろにくっついてきます。

縦社会はわかりますが、特殊な事件と捜査を描くんだから「そこリアルにしてどうすんねん」とこちらがツッコミたくなりました。

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まとめ

ストーリーはさすが。演出はひどい。

というか原作があるので、ストーリーについては原作者の筒井哲也先生がさすがなわけですが、せっかく映画になったんだからここは素直に映画としての評価をしたいです。

警察側の立ち回りにガッツリ目をつぶれば、”シンブンシ”の真の目的に迫っていく流れはスムーズかつ人情的な仕上がりとなっています。

”シンブンシ”側の俳優さんたちの演技もとても安定していて、個人的に好きなシーンはいくつもありました。

ただ、感動を誘う構成に照準を合わせているためか、サスペンスというカテゴリにズレが生じてしまって作中では度々「?」が飛び交います。

豪華キャストに頼らず、製作費の出ない貧乏映画だったら逆にワンランク上の作品に仕上がったのかもしれません。

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ネタバレ評論

↓↓ ここからネタバレを含みます ↓↓

 

 

これより先は、ネタバレを含んだ上でのひねくれ評論となります。

ネタバレNGの方は閲覧いただかないようお気を付けください。

 

 

 

↓↓ 以下ネタバレ評論 ↓↓

唯一の殺害シーンに違和感。

親方風の男がヒョロの死体をぞんざいに扱ったことにメタボが切れて、スコップで殴り殺すシーン。

スコップをバトン代わりに殴打リレーが始まるわけですが、男たちの絆が固まっていく友情のシーンとなっています。

ここは前後の演出を考えると、正直ちょっと見てられないほどに恥ずかしくなってしまいました。

神妙な面持ちでスコップを握りしめ、これからの困難な道のりに決意を固めるかのごとく、一人ずつオジサンをしばいていく男たち。

ハズカシイ、というかクサイ。

「人をみんなで殺す時にこんな感じになる?」という疑問は置いといて、このシーンは彼らの唯一の殺害シーンなわけで、もう少し現実寄りの悲壮感が演出されててもよかったのにと感じました。

友情という作品全体のテーマを考えると間違いでは無いのでしょうが。

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もっとバトル要素がほしかった。

邦画での警察機関は無能であるパターンが多い中で、今作品の警察の動きはそこまでひどく感じませんでした。

確かにヒョロの父親をボスと勘違いして豪快に無駄足を踏んでしまったり、寸前のところで犯人に逃げられるような詰めの甘さは否めませんし、なによりゲイツ一人の犯行で片づけてしまったラストの経緯は、少年探偵レベルの知能の低さを感じます。

それでも”シンブンシ”達の動向に着眼していく速度と、ターゲット確保に対する指揮系統はわりとまともに感じました。

吉野が”シンブンシ”に対して「警察の動きを読んでいる」と発言していることから、今作品では”シンブンシ”vs吉野の頭脳戦も演出したいんだろうと推測できます。

ところが”シンブンシ”側の警察を出し抜く展開がしれっと進行されてしまい、本来なら「そう来たか」と唸らせれられるシーンなのにあまり印象に残りません。

せっかくの頭脳戦なのに、やられた感もしてやった感も無く、バトルの要素は皆無でした。

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生田・戸田ペアの追いかけっこを掘り下げてみる。

ゲイツがネットカフェの店員に逃がしてもらったところを、たまたま吉野警部補に発見されて追いかけまわされるシーン。

あえて長くしたとしか考えられないこのシーンですが、なぜこんなことになってしまったのでしょう。

まずは吉野のどこまでも追いかけて捕まえるぞ、というしつこさと執念を表現したかったと仮定します。

街中チェイスの終盤、逃げ場を失いかけたゲイツは服を着たまま川へ入り逃走を続けます。そこは逃がすまいと吉野も続いて川へイン。

ところがその後高さのある下水トンネルに逃げ込んだゲイツの追跡を続けようとするも、よじ登れずになんと追跡を断念。

物理的に追跡不可となってしまう事は仕方ないにしても、あれだけたくさんの警察を無駄に動かしておいて、大本命である主犯を目の前に応援を呼ばない判断は頭を捻ってみても優先順位が見えません。

もし仮に携帯や無線機等の通信機器が、水没により使用不能になったために連携が取れなかったとしたら、そこはイチ社会人としてちゃんと考えて行動してよと声をかけたくなります。

追跡断念後、自分のプチ苦労話を大声で喚いたシーンを考えると、”あんたなんかいつでも捕まえられるから”と余裕ぶったと考えるのも難しい。

何よりゲイツとのニアミスはこのシーンが最後であり、なんなら生きて捕まえることすら遂げられていません。

補足ですが、街中チェイス中の吉野の人間GPS的な超人レベルの嗅覚。

何度も見失ってはおそらく最短距離でゲイツを発見してしまう吉野。ターミネーターかのごとく遠くの方からシュタシュタ走ってくるシーンは恐怖映像でした。

追いかけっこで執念はなんとなく伝わったものの、結局何のシーンなのか目的がはっきりわかりませんでした。

というか、そもそも見つけた瞬間に「えっ、追いかけるんや?」と感じたのは僕だけでしょうか。

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まとめ2

原作にある程度忠実な劇場版「予告犯」。

原作の固定観念は除外してレビューしたかったのですが、最後に少しだけ触れなければいけません。

それは、原作の最も大切なイメージが抜き取られた代わりに感動要素を入れちゃったことで生じた、意味のよくわからない作品になってしまった点。

原作の予告犯についてのコメントは控えますが、各登場人物の行動と発言は基本的に同じで、”シンブンシ”の目的にもアレンジは加わっていません。

にもかかわらず全く別の世界観を感じるのは、原作者が絶妙の黄金比でバランスを整えた作品に、別のテーマを半ば強引に加えてしまった事が原因ではないでしょうか。

とにかく、それはそれで描きたかったであろう友情のシーンは普通にぐっときたので 、感動というテーマのみで考えるとステキなラストだったと感じます。

 

 

一口おまけ評価

雨の日に行きたくなるラーメン屋第一位。

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